いよいよクリスマスになっちゃいましたが、今回のセレクトは大ネタで勝負しました。ワム!の「ラスト・クリスマス」です。今ではクリスマスに街中に流れ、通称「バカップル」をロマンチックに盛り上げるために、頻繁に毎年リピートされまくっているこの曲。正直もうウンザリという人の気持ちもよくわからなくもないんですが、でもボクは、80年代のリアルタイムで聴いた時には、本当にいい曲だと素直に思ったんですよ。恥ずかしいことに。
まずタイトルがミソですね。これ「最後のクリスマス」という意味だと思っている人も多いでしょうか。実際には「去年のクリスマス」という意味です。以下、歌詞はこんな感じ。
「去年のクリスマス、オイラあんたに心を捧げたってのに、
 次の日、あんたったら、そいつをポイと捨てやがった。
 今年は泣くのはゴメンだから、
 特別な誰かに、そいつを捧げるつもりだぜ」
      (訳:ショック太郎)
つまり、クリスマス近くになって新しい恋人と過ごす事になるってのに、いまだに去年の恋人のことを未練がましく思ってるという男の歌なわけですよ。まぁ、一応「Someone Special」という言葉でフォローしているものの、今一緒にいる恋人は、妥協の産物なんだぜ・・・というニュアンスを汲み取れなくもない。たしかワム!の2人がグループ交際みたいにしてスキー合宿に行くプロモ・ビデオも、そんな痛い内容だったような気がします。というわけで、こんなヤケクソな内容の歌を聴いてロマンチックになってる日本のバカップルは、ほんとアホだな(笑)
曲そのものは、80年代らしいエレクトロな音色で全編覆われておりますが、音色の使い方が巧いのか、それほど安っぽい感じはしません。ジャンジャンとシンプルに鳴らされるシンセ・コードと、ルート音をボボボボとなぞるベース・ラインが、単純に巡回するコードと相まって、ある種ミニマルな雰囲気を作り出しています。さりげなく入っている鈴の音もいい感じです。まぁ曲そのものは、ポリスの「見つめていたい」を参考にしたのは明らかなんですが、ジョージ・マイケルの歌にも表現力があり、ちゃんとワム!としての個性ある曲になってます。(アンドリュー君は、当時も今も影が薄いけどね)
しかし、山下達郎の「クリスマス・イブ」といい、ワム!の曲といい、日本人が好きなクリスマス・ソングって、どうしてこうフラれる失恋の歌ばっかりなんでしょうか。日本人のクリスマスのイメージって「楽しい」とかよりも「切ない」とか、そういうなんでしょうか。つくづく淋しい人種なんですねぇ〜。