アメリカン・スタンダード・ソングス
もともとロック少年でしたので、ミュージカルなんてお呼びじゃなかったのですが、最近ミュージカル音楽にハマっています。豪華絢爛、サービス過剰、演出過多、動き回るメロディーに優雅なオーケストレーション。本当にたまりません。
古いアメリカのミュージカルやスタンダード音楽にハマるきっかけは、おそらく高校生の時に出会ったハーパース・ビザールっていう60年代のバンドだったと思います。1920年代から40年代ぐらいの古いスタンダードやミュージカル、カントリー、果てはシャンソンまで、そのカヴァーのレパートリーの広さと、ヴァン・ダイク・パークスやニック・デカロといった人たちの素晴らしいオーケストラ・アレンジが相まって、なんとも不思議なポップ・ミュージックを作っていました。
あと、それ以前に子供の頃はビートルズの曲でもジョンより、圧倒的にポールの曲の方が好きだったのも影響ありかな。今思えば「ハニーパイ」とか「ホエン・アイム・シックスティー・フォー」とか、もろにミュージカル風ですよね。ポールのお父さんは、もともとディキシーランド・ジャズとか、そういう古いジャズ・バンド(ジャグ・バンド?)のミュージシャンでもあったそうで、そういう音楽にポールは子供の頃からふれていたんでしょう。
そういえば、ミュージシャンの近田春夫さんは、ピートルズの「サージェント〜」というアルバムを「ブンチャ、ブンチャっていうリズムばっかり」みたいな事を言ってらっしゃいましたが、この「ブンチャ」っていうスウィングのリズムこそ、まさにノスタルジックなグット・タイム・ミュージックなんですよね。最近、こういう古い1920年代から40年代ぐらいのアメリカのアコースティック・スウィング系、若い人たちで人気があったりもするそうです。だから、ボクの「ミュージカル好き」という発言は、むしろ「古きよきアメリカのスタンダード音楽」への憧れからなんですね。たとえば、ジャズのレパートリーなんかは、実は殆んどミュージカルの挿入歌だったりしますからね。
細野晴臣さんが、その名もズバリ「ティン・パン・アレイ」というバンドを作ったのも、アメリカのスタンダード・ソングスへの憧れからだといいます。彼はこうインタビューで発言しておりました。
「そうした古いアメリカのスタンダード・ソングの聴いていると、もうそこから戻れなくなってしまうんです」
スティーブン・フォスターからコール・ポーター、ジョージ・ガーシュイン、リチャード&ロジャース・ハーマスティン・・・。彼らの作るメロディの芳醇さ、優雅さ。ただそれを「古いもの」として片付けるのは簡単です。でも、そうではなくて、ボクは、あくまでそれを「今、必要な音楽」として聴いています。たとえば、耳のモードを「ロック」としてリセットしながら聞いてみると、すごいヒップに聴こえる時もあるし、「モンド」だと思ったら、これほど可笑しい曲たちは、そうそうあるもんじゃありません。