「好きなアルバム200選(http://www.geocities.jp/nabeton99/album200.html)」をやって、自分の好きなアルバムに恩返しをしてやろうと思ったのに、いざ選んでみたら、選ばれなかったアルバムが不憫でしょうがないんです。選ぶという行為は、同時に捨てるという行為でもあるんだなぁと、当たり前のことを思ったわけです。だいたい1アーティスト1枚なんていう決まりを作ったのも問題。そうやってルールを限定することで逆に選びやすくなるかと思ったんですが、そもそもキンクスやXTCみたいに、ほとんどすべてのアルバムが大好きみたいなアーティストは、どうすればよいのでしょうか。ビートルズなんて、さんざん迷った挙句、1枚も選ばないという結果に。そりゃないだろう、と自分に突っ込んでみたりして。

1枚に選べないということではスティーリーダンもそう。本当にどれも好きなアルバムなんだなぁ。結局ドナルド・フェイゲンの「ナイトフライ」('82)を選ぶという苦肉の作でお茶を濁しました。全音源を収録したボックス・セットでも選ぼうかと思いましたが、いくらなんでも反則でしょう。

完成度なら「エイジャ(彩)('77)や「ガウチョ」('81)、曲のクオリティなら「幻想の摩天楼」('76)あたりなんですが、一番愛着のあるスティーリー・ダンのアルバムなら、まちがいなく「プレッツェル・ロジック」('74)(写真)でしょうね。理由は単純。初めて買った彼らのアルバムだから。確かアメリカ盤の中古で、300円でした。もちろんCDじゃなくてレコードですよ。なにしろ中学生の頃ですから。

正直、始めはピンとこなかったんですよ。地味だなぁと。ガイドブックにはスタジオ・ミュージシャンの凄腕テクニックがスゴイみたいな書かれ方をしていたので、もっとハイパー・テンションの物を期待してたんでしょう。思ったよりものんびりしてるし、カントリーとソウルが混じったような、どっちつかずの音楽だなぁと思ったんですよ。ところが不思議なもので何回も聴いてくると、もうハマりだすんですよね。

彼らの伝記を見ると、このアルバムは曲を作る余裕がないので、急いでパッと作ったり、昔のアマチュア時代のナンバーを引っ張り出したりして苦労して作ったアルバムだそう。でも、その彼ららしくないラフな雰囲気が、このアルバムを独特なものにしています。まだ、この頃は「バンド」っぽいんですよね。当時の邦題も「さわやか革命」でしたから、きっと日本ではイーグルスやポコに続けみたいな感じで売り出したかったのでしょうか。でも不思議なことに、そういう雰囲気すらあるのです。いつもニヒルな彼らの、ちょっと柔らかな一面も垣間見れる素敵なアルバムになってます(歌詞は、相変わらずシビアなんですけどね)