シンコー・ミュージックから出てるディスクガイド本「FUSION」をパラパラと見ていて、なんか無性に中古レコード屋で邪魔そうに置かれているフュージョンの安レコを漁りたくなってきました。フュージョンって、国内と海外とでは微妙にイメージが違うような気がします。海外だと、やっぱりソウルやジャズの延長線上にあるんですが、日本だと、もっと趣味性の強いもので、それこそプログレやテクノやロックみたいなものまで取り入れちゃってるサービス精神があります。

で、そうした海外フュージョン的なソウル/ジャズ心を感じるワビサビの世界と、国内フュージョンならではのサービス精神溢れるバラエティ豊かな世界が共存しているユニークなプロジェクトが「KYLYN」というグループ。中心メンバーは渡辺香津美坂本龍一。この「KYLYN LIVE」('79)は、個人的にものすごく愛聴したんですよ。これも小学生の頃に聴いたんです。もちろんYMOが好きだったんで、坂本龍一に惹かれて買ったんですが、2枚組で3800円もしたんです。もちろん大金でしたが、どうしても欲しくて親に頼んだら誕生日まで待てと言われました。で、待ちましたよ(笑)

で、聴いてみたら「何だよ、テクノじゃないじゃん」と微妙にガックリきたんですが、そのうちにどんどん面白くなっていったんです。個人的にライブ・レコードって、あまり好きではないんですが、これは本当にコンサート会場に居るような臨場感がありました。インプロヴィゼーションも、さすがに凄腕ミュージシャンが集まっているだけあって表現力の豊かさは並々ならぬものがあります。やはり今聴くとウェザー・リポートあたりに近い世界観もありますが、当時はそんなの知りませんでしたから。あと英国のカンタベリー系のジャズ・ロックにも近いセンスの曲もあります。

面白いのはジノ・ヴァネリのカヴァー。これを矢野顕子が歌っています。その流れでアッコちゃんの「ごはんができたよ」から「在広東少年」もやってます。まさにニュー・ウェイヴ時代ならではのフュージョンですね。それにしても坂本龍一のヴィンテージなシンセ音は、かなり浮きまくっていますが、まあご愛嬌。反対に渡辺香津美のギターは文句なしに素晴らしい。テクニックも音色も申し分ない。だた初期のツアー・メンバーだったYMOだとイメージが違う感じがしたのが彼のギターでした。テクノとフュージョンの溝の深さも感じる話ですが、このあたりの異種ジャンルのバトルみたいなのも国内フュージョンの醍醐味でした。坂本龍一の「カクトウギ・セッション」(「サマー・ナーヴズ」)の延長線にもありますし、初期のYMOは、クラフトワークというよりも、むしろこうした国内フュージョンの延長線にもある音楽だったのだのだなぁと改めて思いました。