名盤中の名盤だと思います。高橋ユキヒロの「音楽殺人」('80)。このアルバムに関しては「昔、好きでした」だけで終わらせたくないですね。初めて出会った小学校時代から現在にいたるまで、いったい何度針を落としてきたことでしょう。ちなみにレコードの初回盤は目にも眩しいブルー・レコードで、ユキヒロ・デザインというレーベル・ステッカーとポスターが付いていました。YMOの「ソリッド・ステイト・サバイバー」もカラー・レコードでしたし、当時はこういうの多かったんですよね。

前作「サラヴァ」のダンディ路線から一転、今回は時代のニーズに敏感に反応したかのようなニュー・ウェイヴ路線なのですが、スペシャルズあたりの2トーン・ムーブメントにも影響受けた軽やかなスカっぽいリズムとか、まるでベンチャーズを思わせるようなGSっぽいインストとか、さらにはモータウン・ナンバーのカバーまで、どれも本当にセンスがいいチョイスなんですねぇ。その後の彼のアルバムが、ほとんどテクノ的なジャストなリズムで支配されているので、このアルバムの「ドラム叩いてます」みたいなバンド・サウンドは本当に聴いていてウキウキします。スタジオ1発セッションみたいなノリの曲もあり、そういったラフな部分も逆に今では生きてるんですよね。このアルバムが何度聴いても飽きない理由は、そういう「遊び」の部分にもあると思います。ピチカート・ファイヴ小西康晴氏も、このアルバムが大好きだと公言していて「ユキヒロさんには、もう一度こういうオシャレなサウンドのアルバムを作って欲しい」とコメントしておりました。まったく同感ですね。実は80年代後半以降の彼のソロ・アルバムには個人的に全然納得できなくて、だからこそ、自分のなかではますます「音楽殺人」の評価は高まっていくばかりです。

細野晴臣は天才、坂本龍一は鬼才、ボクは凡人」といったユキヒロ氏ですが、彼のような独特の音楽を作り出すミュージシャンが凡人なわけはありません。しかし、やはりユキヒロ氏は細野晴臣坂本龍一の強力タッグ・チームにサポートされてこそ、もっとも魅力を発揮できるミュージシャンのような気がしますね。このアルバムの坂本龍一作曲の「School of Thought」や細野晴臣作曲の「Blue Colour Worker」といった脳天をガツンとやられるような名曲を聴く度に、そう思うわけです。この2曲は、YMO関連のすべての曲の中でもベストといてもいいほど大好きです。まぁ、いつになく熱い感じでレビューしましたが、もう本当に好きなんだもん(笑)一家に一枚の定番ですよ。