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「浮気なぼくら」('83)のレビューをするつもりが、家のレコード棚を探しても見つかりません。それほど久しく聴いていなかった作品ということでもあるんですが、記憶だけを頼りに何か書いてみようと思いつつ、それじゃあんまりなので慌てて近所のCDショップにて購入しました。何だか悔しい気分でレジに向かって渋々とお金を払っていたのですが、家に帰って聴いてみて「う〜ん、やっぱりYMOはいいなぁ」と感激しているところであります。
このアルバム、大ヒット曲「君は胸キュン」の印象が強くて、インテリの3人がお気楽に作った歌謡アルバムという感じで以前は捕えていたのですが、意外と音は手堅くシリアス。細野作品に至っては前作よりもダークな印象。でも全体的には前作のような重苦しい雰囲気はないのがポイント。加えて後の散開を彷彿とさせる雰囲気が、今となっては何故か泣けてくるのは何なんでしょうね。もはやYMOで泣かされる日がくるとは(笑)
特に泣かされたのが、坂本龍一がかわいい愛娘に送ったという「音楽」。同じぐらいの子供を持つ父親なら「♪待ってる、一緒に歌うとき」という歌詞も含めて共感できるのではないでしょうか。YMOの3人がリード・ボーカルを取り合ってるというのも意外と珍しく、何だか仲良し3人組というか、まるでアイドル・グループみたいですね。
あと、アルバムの後半3曲の流れ。これがまた泣けます。「邂逅」は「♪今までのボク、サヨナラ」という歌詞が、YMOという呪縛から逃れて3人がソロへと旅立っていくのを示唆しているようですが、まあコレはファンの深読みなんでしょうね。「希望の河」に至っては、まさに河のような激流にながされていったYMOそのものを象徴しているようですし。「WILD AMBIIONS」ももシンプルな曲ながら印象的な曲です。
これを聴いて「テクノ」と思う人は今やほとんど皆無でしょう。今の歌謡曲の方がよっぽどテクノですから。でもYMOがここで提示した温かみのあるテクノ・サウンドは、その後、表面的なテクノロジーの部分だけで安っぽく量産されていこうとしていく「歌謡界」への辛辣な警告のようにも聴こえるのです。お遊びで実験的な「テクノ歌謡」を手伝ってきた3人が最後に出した答えが、まさしく、このアルバムです。あと余談ですが、ひさびさに聴いたらムーン・ライダースの「青空百景」にも近い雰囲気ありましたね。