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YMO散開後に発表された「SERVICE」('83)は「増殖」('80)同様、一種の企画盤で、新曲7曲の合間に、今では有名になった三宅祐司率いる劇団スーパー・エキセントリック・シアター(S.E.T)のギャグを挟みこんだもの。
もうYMOが終わる事を前途に作っているためでしょうか、比較的わかりやすいほど黒っぽいサウンドにシフト・チェンジしており、歌詞も再び英語にもどっています。緩やかな16ビートのファンキーなリズムが印象的な「Limbo」や「Madman」など、その後のハウス・ミュージックなどにも通じるものがあって、最後まで追憶に走らず前向きにサウンドを変えていったあたりがYMOのスゴイところですね。ちなみに細野氏は生ベースを弾いており、これが無茶苦茶ファンキーでカッコいいフレーズ連発です。
前作に予告編だけ入っていた「以心電信」は、どことなく60年代後期のビートルズあたりのサウンドを彷彿とさせるもの。これも今までのYMOにはなかったものですが、まぎれもなくYMOならではのサウンドになっているあたり、さすがにこの3人が集まった時ならではの特殊な科学反応という感じがします。
「Shadows on the Ground」は、スティーリー・ダンあたりを意識して作ったそうですが、今聴くとむしろプリファブ・スプラウトみたいな感じですね。こうなってくると、もうサウンドはテクノというよりAORに近いです。
坂本作品で自身が歌う「Perspective」は転調に転調を繰り返す不思議なコード進行と切ないメロディが印象的で、名曲だと思います。
S.E.Tのギャグは、今となってはあまり笑えるものではなく、むしろスネークマン・ショーがいかに個性的だったかを痛感してしまうわけですが、それでも当時は自分でも結構ウケてましたよ。ちなみにYMOも例によってコントに参加してます。S.E.Tは、その後YENレーベルからアルバムを出してますが、そっちの方がいかにも彼ららしいシュールなギャグが連発していて、笑えるかどうかは別にして、結構好きなアルバムでした。そういえば三宅祐司は、当時TBSラジオで「ヤング・パラダイス」というラジオ番組をやっており、当時よくボクも笑いながら聴いてましたね。何だか懐かしい話です。