アニメ映画「銀河鉄道の夜」のサウンドトラック盤('85)。細野晴臣ファンのみならず、いろいろな人が「あのサントラは好き」と公言し、いまだに根強い人気があるアルバムです。原作はもちろん宮澤賢治で、登場人物がすべてかわいらしい猫に置き換えたというますむらひろしのマンガを映画化したもの。この映画は、ボクも子供の頃に映画館に観に行って、とても感動した覚えがあります。

今でも、映画のパンフレットを大切に持ち続けていますが、久しぶりに読んだら、そこに「銀河を彩るコンピューター・サウンド/作曲の細野晴臣さん」というタイトルで、インタビューが載っていました。それによると、何と本作品は、一ヵ月半で43曲(!)を制作し、そこから20曲が選ばれたそうです。これはCMなら10年分にもあたる量で、あらためて、この時期の細野晴臣の創作意欲のすごさを実感します。

宮澤賢治について、細野晴臣は「僕は彼と同じ立場で、心は仏教、表現はキリスト教というかたちをとった」とコメントしています。「この映画音楽の制作を通して、賛美歌というものがいかにポップスに影響しているかということを発見できた」とも。この「銀河鉄道の夜」の音楽に濃厚なボヘミアン的な気質は、この時期に彼が聴いていたドボルザークマーラースメタナなどのクラシック音楽の影響もあるようです。

単に神秘的で美しいだけでなく、オカルト的な怖い曲もあり、改めて細野晴臣という作曲家のスケールの大きさを感じる素晴らしいサントラ盤です。ちなみに、このサントラには入っていませんが中原香織という女性が歌う「銀河鉄道の夜」というイメージ・ソングがあり、ノンスタンダードからシングルが出ていました。当然そのシングル盤も当時買いましたが、同じく細野晴臣が作曲した「風の谷のナウシカ」同様、ポップで可愛らしい曲でした。