数ある70年代英国フォークのなかでも、このヘロン(HERON)というグループは何か特別な響きがあります。多くの英国フォークがトラッドという伝統に趣きを置いているのに対し、ヘロンはもっと素朴な歌心があります。特に野外録音されたこのファーストアルバム('70)なんか、アルバムとして何かを完成させようというより、とりあえず「歌」が出来たんで聴いてくださいみたいなデモ録音のような雰囲気で、これが実にたまらない。曲が終わってもテープと止めていないのか、曲間に小鳥のさえずりが入っているのも美味ですね。何となく昔友達とギターを持っていった野外のキャンプとかを思い出しちゃいます。あるいはピクニックですか。曲が終わると思わず「あ〜、腹減った。おにぎり食べるぅ〜」とか、声が聴こえてきそうです。

これでメジャーなプロダクションだったらビージーズみたいになっちゃうのでしょうけど、そうはならなかったのがよかったのでしょう。リアルタイムではまったく売れなかったので即廃盤。おかげで中古レコード屋でも壁モノ、つまり値段の高いレコードとして変にマニア受けしていたのも確かなんですが、CD化された今では普通に手に入りやすくなりました。これはよいことです。決して難しい音楽ではありませんから。サイモン&ガーファンクルなんかが好きな普通の洋楽ポップス・ファンにも気に入ってもらえそうな内容です。それにしてもヘロンとか、ヴァシュティ・バニヤンとかチューダー・ロッジとか、ボクの好きな英フォークって、みんな昔は高かったのは何故。というか英フォークのオリジナルLPって、どれも高い。だから再発CDまで待つのが無難です。

実はこのヘロン。小学生の時からの愛聴盤なのです。何でわが家にヘロンのアナログがあったのか謎なんですけど、おそらくレコード会社に働いていた親戚がサンプル盤をよくダンボールごとくれたので、その中に入っていたのでしょう。そういえば他にもバッド・フィンガーとか色々あったなぁ。我ながら、なんちゅう恵まれた小学生(笑)というわけで、わが家にはファーストが、アナログ日本盤(ただしジャケ無)、韓国盤CD、そして最近発売された紙ジャケと3種類あるわけです。いいアルバムは何度でも買いたくなりますね。おそらくアナログ再発もでたら買っちゃうでしょう。

ところでこのヘロン、何とニュー・アルバムが出るという噂を聞きました。っていうかまだ活動してたの!?