ザ・フーは子供の頃から大好きで、この「セル・アウト」('67)なんて10歳ぐらいの時だったんですから、今から考えると、随分おマセな小学生でしたよねぇ。でも「ハードロックの王者」とか「パンク・ロックの元祖」とか、そういう硬派なイメージはザ・フーにはなかったなぁ。おそらく「マイ・ジェネレーション」や「四重人格」といったアルバムを聴いたのが、もっと後だったからでしょう。当時のボクにとってはザ・フーのイメージといえば「クイック・ワン」('66)であり、この「セル・アウト」でした。何ともポップですね。これでいいのか・・・。

なんで小学生にしてLPレコードが買えたかというと、ちょうど80年代初頭ってザ・フーのオリジナル・アルバムが1500円という格安な値段でLPで再発されていたからです。がんばって小遣い貯めれば何とか買える額ですね。同じ頃、ジミ・ヘンやクリームも1500円で再発されてましたが、こっちは小学生には今ひとつという感じでしたね。もう、さっぱりわかんねえやって感じ。なんかオールド・ロック・ファンに殺されそうですが、これが小学生の正直な感想ですよ。でもザ・フーは、あんまりブルースっぽくないでしょ、曲とか。それがよかったのかな。あとドラムが好きだったんでキース・ムーンはアイドルでした。「キッズ・ア・オールライト」という2組組LPに付いていた写真集を飽きもせず眺めていたものでした。特にドラムをぶっ壊している写真は小学生ながらに衝撃的で、自分も将来ライブでドラムをぶっ壊すぞ〜とか怖いことを考えてましたが、いまだに勇気がなくてやったことありません。勝手にシンバル・スタンドが倒れたことはありましたが(笑)

この「セル・アウト」のポップっぷりはハンパじゃなくて、これを聴くとビートルズビーチ・ボーイズが、いかに難解なグループだったかということがよくわかります(笑)とにかくピート・タウンゼントの曲作りがすごくて、この湯水のように湧き出てくるこの美しいメロディーはなんなのでしょう。曲間にジングルみたいなのを挟んでノン・ストップで短い曲が次から次へと進行していくために、当時の「ヒット・チャート」を流すラジオ番組を聴いているような錯覚になります。実はデ・ラ・ソウルのファーストを初めて聴いた時に頭に浮かんだのが、この「セル・アウト」でした。

それにしても「いれずみ」からジングルを挟んで「過ぎし二人の恋」のイントロにつながる部分は、何度聴いても鳥肌が立ちます。ほとんどソフト・ロックだな、こりゃ。「♪ラブ、ラブ、ラブ〜♪」なんてコーラス部分は、まるでアソシエイションみたいだし。後半には「トミー」の断片もチラホラ。現行CDはボーナス・トラックが多すぎて集中力に欠ける難点があるので、「ラエル・その1」「その2」が終わったら、一度ストップするべき。ついでながらジャケも最高っすね。