「blue marbleという名前はサジタリアスのセカンドから?」という質問をよくされるんですが、う〜ん、さすが皆さん音楽通ですね。もちろん、そのアルバムは持っていましたが、そういうわけではありません(笑)個人的にはサジタリアスとえいば、圧倒的にファーストの「プレゼント・テンス」('68)の方が好きでした。高校生の時に探しに探してやっと手に入れたアルバムという事もあるのでしょうね(直後にCD化されたけど・・・)。特に幾層にも重ねられたコーラス・ワークは魅力的でした。

サジタリアスはコーラスの魔術師と一部で熱狂的なファンを持つカート・ベッチャーと、バーズのプロデューサーとしても知られるカリフォルニア・ポップスの裏のボスともいわれるプロデューサー、ゲイリー・アッシャーとのコンビによるユニットです。もともとボールルームというグループのデモを、ゲイリーが商品化させたという即席ユニットなので、当然の如く短命でした。ベッチャーはご存知の方も多いと思いますが、デビュー当時のアソシエイションやミレニウムの「ビギン」という裏名盤でも大活躍しています(他にもたくさん!)

ベッチャーという人は、美しいものを追求するがゆえに、どこかバランスを欠いたような歪な狂気すら感じてしまう不思議なミュージシャンです。第一印象は、ソフトで美しい。しかし聴きこんでいくと、どんどんカリフォルニアの闇を感じる怖さすらあるサウンドベトナム戦争を彷彿とさせるようなノイズ・コラージュが入った「マイ・ワールド・フェル・ダウン」のシングル・ヴァージョンは、その典型。ボーナス・トラック満載のSUNDAZEDからの輸入盤に収められた未発表マテリアルも驚きで、「Love's Fatal Way」など、鳥肌が立つようなスゴイ音。というか、やり過ぎ(笑)

今でこそ「サイケ」とか「ソフトロック」でジャンル分けされてしまう音楽ではありますが、この頃のカート・ベッチャーの音作りには「今までなかったポップ音楽を作り上げよう」という気迫が感じられるのです。個人的には無垢な美しさを感じるボールルームのデモ・テイク集CDの方が大好きなんですが、やり過ぎともいえるミレニウムの「ビギン」(そこが魅力なんですが)より、この洗練されたサジタリアスのファーストの方をベッチャー未体験者にオススメします。ちなみに2人とも、すでに故人・・・(合掌)