この1987年という時代は、遂に大衆レベルでもレコードからCDにメディアが完全に移行してきた時期で、ボクも実際、この頃から新譜よりも旧譜で再発されたCDを買うのが面白くてたまらない時期でした。何と言っても、「レアグルーヴ」と「ソフト・ロック」というジャンルというか概念が日本でもわずかに注目されはじめた時期で、ボクはここに並んだどの新譜よりも「ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ」のようなソフト・ロックや「アーバン・クラシックス」のようなレア・グルーヴの編集盤を聴いていたような気がします。廃盤で手に入れにくかったフランク・ザッパトッド・ラングレンがドバっと再発されたのもこの時期で、そういうのにお金を全部吸い取られて、純粋にロックの新譜なんて買ってる余裕なんてありませんでした。ライ・クーダーの「ゲット・リズム」やU2の「ヨシュア・トゥリー」のような当時話題になったアルバムでさえ、買ったのは随分後でした。それでも当時買ってよく聴いた新譜アルバムを何とか10枚選んでみました。MMの表紙はラップの「L.L.クールJ」です。


シェリアン・オーファン / ヘリボーリン
デイヴ・スチュワート&バーバラ・ガスキン / ザ・シングルズ
③ウドゥントップス / ライヴ、ヒプノ・ビート、ライヴ
④ビッグ・ブラック / Songs About Fucking
あがた森魚 / バンドネオンの豹
ピチカート・ファイヴ / カップルズ
鈴木さえ子 / スタジオ・ロマンチスト
⑧3ムスタファズ3 / ショッピング
⑨ディーコン・ブルー / レインタウン
⑩ザ・デュークス・オブ・ストラトスフィア / アン・アンソロジー


①は田園フォークという言葉がピッタリの英国の男女フォーク・デュオ。小編成のストリングスが美しい。②は元ハットフィールド&元スパイロジャイラという英国プログレ人の逆襲による箱庭エレ・ポップ。今でもよく聴きます。③はジャーマン・ロックのノイ!やカンに英国的なパンク、ネオアコ感覚をプラスしたバンドの迫力のライブ盤。④は後にグランジ系のプロデューサーとして有名になったスティーヴ・アルビニのバンドで、耳が破裂しそうなギターとドラム・マシーンの組み合わせが今聴いてもショッキング。カッコいい。これぞパンク。⑤はタンゴをネタに「あがたワールド」らしい変態ノスタルジーが炸裂する名盤。

⑥はソフト・ロックを徹底的に研究した日本の最初の成果。ピチカートもPSY・Sと同じで「最初の2枚」がピークだったような気がします。 ⑦はムーン・ライダーズ&XTC人脈が全面参加して、好きを通り越して、もう「うらやましい」という気分でしたね、当時から。⑧は変態ワールド・ミュージック・バンドで、今聴いても、この無国籍風な無茶苦茶さはすごいです。⑨はプリファブ・スプラウトを10倍地味したようなバンドですが、ジャケを含めた雰囲気が黄昏時のBGMにピッタリ。⑩は60年代サイケを徹底的に再現したXTCの変名盤を2枚カップリングしたCD。そんじょそこらのネオ・サイケ連中とは、「格」が違うアレンジと曲作りの上手さに圧巻。というか、やっぱりただのオタクだ(笑)