ソフト・マシーンは、イメージ的に「難解」と思われがちなバンドかもしれません。ためしに一枚聴いてみたら、さっぱりわからなかったので、他のアルバムを買おうとも思わなかった、という人が圧倒的に多いと思います。どのアルバムで彼らを知るかによってイメージが変わるバンド。というのも、彼らはアルバムごとに音楽性が変化するどころかメンバーもコロコロ変わり、最後にはオリジナル・メンバーは1人もいなくなってしまうという、実にとらえどころのない集団でもありました。

そのクセに、アルバムタイトルは、すべて数字という、何とも割り切りのいいサッパリしたもの。わかりやすいを通り越して、ずいぶんとクールな印象を受けてしまうのも事実。「プログレ」という括りで語られるのは、特に日本ではしょうがないとしても「ジャズ・ロック」というのも聴き手を限定しそうなジャンル名ですし。ましてや「カンタベリーサウンド」という言葉を口にだそうものなら「何ですか、それ?」という事にもなりそう。まぁ一言でいえば、彼らの出身がカンタベリー地方で、それ以後も「ソフト・マシーン・ファミリー」ともいうべき巨大な音楽サークルのような連帯を感じさせるような独特の人脈図があったということです。

キャラヴァンもカンタベリー系といわれていますが、もともとはマシーンと同じバンドでした。2つに分裂したんですね。マシーンの黎明期のリーダーはデヴィッド・アレンですが、彼はデビュー直後に脱退し、フランスでゴングを結成しました。その後ケヴィン・エアーズも脱退し、不思議な味わいのあるソロを連発しました。さらにニュークリアス、エッグ、ハットフィールド&ザ・ノースなどなど、名前ぐらいは知っている方も多いと思われるこれらのバンドも、どこかでマシーンとメンバー同士がつながっているのです。まさに網の目状態。しかし、この人脈図がハマルと抜け出せない甘い罠なのかも。カンタベリーサウンドには、知れば知るほどのめり込んでしまう、そういうマニアックな中毒性があります。

あ〜、肝心の音楽性について話すスペースが・・・。とりあえず一枚聴くなら「Volume Two」('69)(写真)という彼らの2枚目のアルバムをオススメって感じです。一言で言えば、サイケデリック・スペイシー・ダダイズム・ジャズ・ポップかな(何だそりゃ)。ロバート・ワイアットのクールな歌声の超絶ドラム。ヒュー・ホッパーのファズ・ベース。マイク・ラトリッジのエコーたっぷりのピアノと歪んだオルガン。そして突然割り込んでくるブラス集団も含め、混沌としながらも次々と短い楽曲がメドレーで突き進んでいく様は、まさに圧巻。ボクにとっては音楽の理想郷のひとつ。