やはりこっちも取り上げなくてはという感じで紹介します。Wha-ha-haのファースト・アルバム「死ぬ時は別」(1981)です。タイトルがいいですね。

「下駄はいてこなくちゃ」に比べると、随分音楽的だったんだなぁというのがひさびさに聴いた印象ですが、このバンドらしさはむしろこっちの方でしょう。フュージョンでもニューウェイブでもない。ジャズでもロックでもないというような演奏は、初めて聴く人は面食らっちゃうかもしれませんが、これ、相当緻密に作られてますよ、よく聴くと。

「イナナキ」は8ビートで突っ走る豪快なジャズ・ロック風ですが美潮のスキャットと途中のフリー・ジャズがさらなる混乱を招きます。これを聴くと、なんとなくジェームス・チャンスとか、あの辺のニューヨークあたりのジャズ・パンクみたいな音が出てきた頃との同時代性を感じますね。それにしても村上ポンタ氏のドラムが実に暴れまくっていて痛快です。個人的にポンタのドラムってくどいしうるさいし、あまり好きなタイプではないのですが、ちょっと前に紹介したKYLYNもそうですし、このWHa-ha-haもそうなんですが、こういうフュージョンプログレ系だと、その「くどさ」がむしろハマっちゃうから不思議。やはり彼は絶対にこっち系のドラムの方が水を得た魚ですね。

「ワハワハ」は、いきなりダブとミニマル音楽風で、変態的なシンセの反復に、メンバーが「ワハワハ」と言ってるだけ。「オン・ザ・フロアー」や「マイ・ハピネス」は、いかにもライブで盛り上がりそうなアッパーなフュージョンですが、これまた無茶苦茶な展開がザッパっぽくもあり、一筋縄ではいかないヒネクレ精神がいかにもですね。特に後者で演奏がメチャクチャになってきたところで小川美潮が言う「こんなドラムじゃやってられない!」ってセリフが最高です。

「コーモリ」と「タクティクス」は非常に美しいメロディーを持った曲。しかし後者は、ひねくれたアレンジ精神が、曲をどんどん変な方向に持ってきます。これを聴くと、坂本龍一の「美を汚したものが、一番美しい」という発言を思い出しますね。「米と醤油」は、リズム・ボックスをバックにメンバー全員が意味不明のラップ(?)をするだけというナンセンス・ソングの極み。ラストの「ZOO]は多種多様な動物の鳴き声をバックに、坂田氏の唸り声が延々続くレゲエで、ユーモラスながら、何故か落ち着いた余韻を残し、アルバムは終わります。

そうです。人生なんてカッコよくてもマヌケでも、「死ぬ時は別」なんです。う〜ん、こりゃ、なかなかに深いタイトル。そして深い音楽なんです(ホントかな?)