メトロトロン・レコーズからデビュー・アルバムを発表した時点で、どうしてもムーンライダーズの弟分という印象があったのがカーネーショングランドファーザーズでした。どちらのファーストも発売後、すぐ買った憶えがありますが、双方ともライダーズが素直なポップス・バンドに聴こえてしまうほどに「凝り性だなぁ」というひねくれたイメージが強かったです。でも、あの頃は、本当に、こういう洒落っ気というか、垢抜けたセンスをもったバンドが少なかったので(ビート・パンクとか、ロクな音楽しか流行ってなかった)、こちらの勝手ながら「同士」に出会えたかのように嬉しくなって、愛聴していたものです。ボク自身も、高校生ぐらいで、本格的にオリジナル曲を作り初めた頃で、それだけになおさら彼らの作る「普通のポップスじゃ物足りない」的スタンスに憧れと共感をもって接していたわけです。

というわけで、ひさびさに(ホントに10年ぶりぐらい)に聴いたカーネーションの「Young Wise Men」('88)です。CDを取り出してプレイするまで、どんな曲が入っていたかさっぱり思い出せなかったんですが、いざプレイされてみれば「あぁ、あったあった、この曲」みたいな感じで盛り上がってしまいました。もちろん今でも現役でがんばってますし、もっと完成度高く、さらにタフになっていくバンドだけに、まだこのファーストの時点では「頭デッカチ」もほどほどにせ〜よ!とやんわりとツッコミなくなるような曲ばかりなんですが、まぁ、それもいいじゃないですか、今となっては。

しかし、最初に聴いていた頃と、今聴いている印象と、まったく変わらないのが「歌詞」ですね。何を歌っていて何を言っているのかサッパリわからない。日本語で歌ってるのに、歌の風景とか情景みたいなモノが全然見えてこない。要するにヒット・ソングとして成立するためには、決定的に何かが欠落しているわけなんですが、逆にその欠落している部分がチャーム・ポイントだったりするわけでして。まぁ、このあたりのバランス問題をクリアーしていくために、キャリアを重ねていったバンドともいえるわけですね。

このファーストがカーネイションの最高傑作というわけではないけれど、ここには溢れんばかりの野心と情熱があります。だからやっぱり大好きなアルバム。でも、つまらないことを言ってしまえば「ごきげんいかが工場長」みたいな曲を聴くと、やっぱり「マニア・マニエラ」あたりを思い浮かべちゃうわけでして(笑)