Michael Mcgearと聞いても、ほとんどの人が「誰?」ってなると思いますが、ポール・マッカートニーの実の弟と聞いたらチョットびっくりかも知れませんね。詞の朗読と音楽を組み合わせたアート集団「スキャッフォルド」や「グリムス」のメンバーでもあった彼ですが、兄のビートルズ大人気とともにマスコミの連中に「マッカートニーの弟」といわれるのが嫌でマイク・マクギアに改名したとか。


ポールがプロデュースしてウイングスのメンバーが参加したセカンドの「マクギア」('75)が話題性もあって多少ヒットしたようですが、ボクはこのファーストの「ウーマン」('72)の方が好きです。ズート・マニーやアンディー・ロバーツといったグリムスにも参加していたメンバーらによる味わい深い演奏と、ユーモラスなんだけどちょっぴり物悲しいような儚い感じの雰囲気が、どこまでもブリティッシュな味わい。


いい曲ばかりのアルバムですが、特に印象深いのがタイトル曲。霧のなかで演奏をしているようなピアノやギターのサウンド。兄にも負けないメロディアスな名曲だと思います。あんまりビートルズ関係と並べて語るのも可哀想ではありますが、やっぱり彼もニール・イニスと並んで、裏ビートルズを代表する才能あふれるミュージシャン。イニスも同じグリムスのメンバーでしたが、マクギア本人も、ボンゾ・ドッグ・バンドあたりのメンバーと親しくファミリーみたいな活動をしていたようです。


ところでこのジャケット。てっきりマクギア本人のコスプレかと思ったら、実はお母さんの(つまりはポールのお母さんの)写真らしいです。微笑んでいるようにも哀しんでいるようにも見えるその表情が、アルバムの内容そのものを表しているのかも知れません。小雨の降る中、雨傘とコート姿のマクギア本人の写真も素敵。