ラヴィン・スプーンフルの1965年のファースト・シングルにして大ヒットした「魔法を信じるかい?(Do You Believe In Magic)」です。この日記を読んでくださってる音楽ファンなら、それこそキライな人なんて誰もいないんじゃないかってくらいの、聴くたびに胸がときめく名曲ですよね。たった2分で終わるのがもったいない!


でもコードなんて「C→F」の繰り返しみたいな実に単純なもの。展開はといえば、イントロとサビで登場する「Dm→Em→F」という上昇コードぐらい。しかしこれがポイントで、この上昇するコードがシャッフル・ビートのウキウキするようなリズムとジョン・セバスチャンのホノボノした歌声に乗って展開されると、もうどうしようもないくらいハッピーな気分になるから不思議。


ただセバスチャン自身が歌わないと、この味がなかなかでないのも事実。このバンドはバート・バカラックのように「メロディーとコード進行の妙」で聴かせるバンドではなくて、もっと歌ったり演奏する人間の「語り口の妙」で聴かせるバンドだと思うのです。ラヴィン・スプーンフルの曲は、いろんな人がカバーしていますが、やはりジョン・セバスチャンが歌ったものに心が落ち着いてしまうのは、そういうことなのかな。


曲そのものはまるでバンド版フィル・スペクターみたいな感じで、彼らもカバーしてるロネッツあたりに近いガール・グループの男性版(矛盾してますが)みたいな感じもします。ガール・グループ・サウンドは、実はこの時代のロック・グループに密かに影響を及ぼしているもの。初期のビートルズなんて、まさにそうですし。でも、これが67年以降のサイケ・ブームになると、こういうシャッフル・ビートの可愛らしい感じのサウンドがロックから少なくなります。たとえば日向ぼっこしているような「デイドリーム」と、うだるような都会の暑さに疲れたような「サマー・イン・ザ・シティ」という2曲のサウンドの違いにも、ボクはとてつもなく時代の変化を感じるんです。


そういえば、この邦題も素敵ですよね。ちなみにごく初期の邦題は「魔法の信じるの?」。これだとちょっと頼りないですね(笑)「信じるかい?」の方がやっぱりポジティブな響きがします。