ドナルド・フェイゲンの13年ぶりのソロです。ただ復活スティーリー・ダンが精力的に活動していたので、あんまり久しぶりという感じもしないなぁ。なのでリラックスして聴けました。新譜なんて、どんなに素晴らしくてもせいぜい一ヶ月ぐらい楽しんで、その後は結局古い聴きなじんだ60年代、70年代のロックの名盤をまたも繰り返して聴くような保守的なボクが「これこそ、何十年先まで楽しめる」と思わせる新譜に巡り合えるこの歓び。わかっていただけますか?もっとも「彩(Aja)」以降のスティーリー・ダンにいまひとつピンと来ない人には、この新作もピンとこないでしょうね。だってやってること何にも変わんないだもの。


今回は58歳になった彼の「老い」をテーマにした作品との事。でも、もともとスティーリー・ダンって、デビューした時から老人みたいな人たちだったしねぇ。むしろ今回の新譜の何ともグルーヴィーなリズムに「なんだ全然若いじゃん」という逆の印象をもったのですが、日本盤の歌詞をみたら、やっぱり「枯れて」ましたね(笑)というか絶望の淵に立たされながらもニヤリと微笑んでいるような感じとでもいいますか。やっぱりこの人のヒネクレ度はハンパないなぁ。こんなヒネクレている人が、さらにポップなアルバムを作ろうとするんだから、ヒネクレすぎて「普通」になっちゃったというか(笑)だって、このアルバム聴いて「何がどうヒネクレてるの」って思う人、多いと思いますよ。「別に普通じゃん」みたいなね。でも毒は一部のリスナー達に静かに浸透していくのです。


物事のすべてが「多数決」で動いて、何もかも「消費」される現代に、誰と組むわけでもなく、たった一人で理由もなく抵抗しているような無力感とでもいいますか。ジャケットからして「マンションの上に1人で住んでるガンコ親父」みたいじゃないですか。でも、かなりのヒネクレ者なのに、本当はすごいロマンチストなんだろうなぁと、ボクは思いますね、この人。帯にも書いてあるドナルドの一言を、またも最後に引用します。

「時代がどうであれ、私は70年代のルールで活動する」