その昔、NHK-FMで放送していた「クロスオーバー・イレブン」は、ボクの10代の頃の音楽の先生でした。なにしろその頃はレコードやCDが、今みたいにたくさん買えるほどのお金もなかったので、FMのエアチェックは基本中の基本だったのです。だからFM雑誌「FMレコパル」や「FMステーション」などを買って、黄色の蛍光ペンで気になる番組をチェックして、それに備えて60分のカセット・テープなどを買ってたりしてました。「クロスオーバー〜」は流れる選曲がFM雑誌にあらかじめ載っていたのが嬉しかったですね。


しかし、この番組の要は、なんといって選曲の途中のナレーションでした。ちょっとしたラジオドラマ風の内容で、少々キザな感じながら、とても素敵な男性の低い声でしたっけ。もちろんテープに録音するときはナレーションをカットするわけなんですが、いつのまにか番組が終わってしまった今となっては、むしろそのナレーションの方も聴きたいなぁという気分になっていたのです。オープニングとエンディングに流れるフュージョン風のテーマ曲も、毎回のことながら印象的でしたっけ。


なんてことを思ってたら、あったんですよ。この「クロスオーバー・イレブン」というオムニバスCD(写真)。しかもなんとオープニングとエンディングのアジムスのテーマ曲にあわせて語る津嘉山正種氏のナレーションまで、そっくりそのまま収録されているではありませんか!さらに、小倉エージが選曲している曲が2〜3曲続いた後、例のラジオドラマ風のナレーションも収録されているのです。つまり、このCDを聴きながら、あの懐かしのFM番組を聴いていた学生時代にタイムトリップできるというわけです。


しかも、これは単なるレトロな企画CDではありません。選曲は70年代と80年代中心になるかというこちらの予想に反して、番組は2001年に終了したにもかかわらず、それ以降の新譜のからも選ばれているのです。つまり「もし番組がそのまま続いていたら」という視点になって選曲しているのです。ホール&オーツの新譜で始まり、50年代のチェット・ベイカーのジャズで終わるなんて、なんとも粋な選曲じゃないですか。


こんな番組を聴きながら地方の高校生は、都会のアーバンライフに憧れていたのですよ。もちろん、その幻想は今となっては見事に打ち砕かれたわけですが(笑)