フォークというと、なぜかしら英国のアーティストの方が肌に合うものが多いんですが、そんなわけで、このティア・ナ・ノグ(って読むの?)のファースト('71)を紹介します。古くから英国フォークの間では「よいよい」と言われ続けたこのアルバムですが、主役の2人はアイルランドの人たちです。


アコースティック・ギターを2人で爪弾きながら、なんとも優しい声で歌ってるわけですが、この独特の空気感のようなものを、何と表現したらいいんでしょうか。曇り空しか見えてこないような、ぜんぜんカラっとしていない感じ。


たとえば2曲目の「Mariner Blues」という大好きな曲があるんですが。エコーたっぷりのハミングが後ろのほうでずっと響いていたり、何故か逆回転のギター・ソロが静かに重なってきいたり、もうこのアシッド感といいますか、実にたまりませんね〜。音楽的には、おそらくアメリカに憧れてこういう音楽をやってるんでしょうけど、結果的にどうかんがえても英国という。いや、こういうのがいいんですよ。


以前日記でも紹介したヘロン(HERON)にも似ていますが、たまに登場するタブラのオーボエのような楽器の使い方に、インクリディブル・ストリング・バンドやアメイジング・ブロンデル、あるいはグリフォンなども思い浮かべました。そこまで器用じゃないけど。さらに「夢の中」という感じのボンヤリ感が、アルバム全体を支配していて、その焦点の定まらないところが、逆に魅力的でもあり個性でもあります。この奥ゆかしい世界がセカンド以後消えてしまったのは残念ですが。


アルバム後半は、あまりにも幻想的で悲しげで、その何ともいえないドリーミーな雰囲気に包まれていると、何となくボクは子供の頃遊んだ夕暮れ時の校庭なんかを思い出したりするんです。セピア色の、古ぼけた風景画のような。こういうアルバムが悪いはずがないです。