イギリスの女性歌手の中には、サンディ・デニーの影響を感じさせる人が本当に多くて、今回紹介するスプリガンズのマンディー・モートンも、その代表的な女性。スプリガンズは1st「奇妙な酒宴」('76)、2nd「タイム・ウィル・パス」('77)が日本で紙ジャケCD化されているので今ではそれなりに知名度がありますが、昔はまさに幻のバンドといえる存在でした。


というのも、彼らはまさに「遅れてきたフェアポート・コンヴェンション」。UKトラッド/フォークが全盛を極めていた70年代前半から、時期が外れていました。音楽的な内容は抜群だったのに、何となく当時は時代遅れな存在になってしまったのかもしれません。メジャーのデッカから発売された2枚のアルバムも全然売れませんでした。さらに幻の存在に拍車をかけたのが、1st以前にスプリガンズ・オブ・トルガスというバンド名で発表していたプライベート盤の存在。これがUKフォークの超レア盤といえるお宝レコードでもあったわけです(内容はモロにトラッドなんですけど)


そこへきて、デッカを離れた後の、この3rd。悲しい事に、またも自主制作に逆戻り。しかも初回のみレコード盤の色がブルーという、マニア泣かせなお宝レコード。タイトルは「マジック・レディ」。これは不慮の事故死を遂げたサンディへの追悼盤なのです。マディー・モートンスプリガンズ名義で、時代は1978年。当然全然売れなかったので、UKフォークきってのメガレア盤になってしまいました。もちろんボクもCD化で初めて聴きましたが、メチャメチャ、クリアーで迫力ある音で、実に堂々とした王道のUKロック・アルバムなのです。まちがいなくこれが彼らの最高傑作。トラッドもフォークも関係ないという開き直りのようなある種のポップ風味が、逆にサンディ的な凄味を感じさせる名盤です。それにしても、これが自主制作盤のままなんて世の中どうかしてます・・・。