ポップと呼ぶにはプログレ過ぎ、プログレと呼ぶにはポップ過ぎ。そんな絶妙なサジ加減が逆に印象を弱めてしまったのかもしれませんが、とにかくこのケストレルの唯一のアルバム「ケストレル」('75)は当時、全然売れなかったようです。しかもバンドのギタリストがデヴィッド・ボウイのバック・バンドに参加するとかで、バンドは自然消滅。これ一作で終わってしまいました。何とも情けない話ですが、情けないといえば、このジャケ。なんじゃこりゃ(笑)


しかし肝心の中味の音楽はといえば、もうこれが徹頭徹尾、どこをとっても美味しい、正真正銘の正統派70年代ブリティッシュ・ロックの王道なのです。なんというか、8曲入りでどれも5〜6分の長さという、これまたプログレなのかポップなのかわからない絶妙なサイズではありますが、もうキーボードはメロトロン、シンセ、オルガンと実に的確なアプローチで大活躍。ボーカルもソウルフルで、男臭い哀愁があります。アンドウェラのデヴィッド・ルイスに似た感じです。


これが発表された1975年という時期も微妙ですなぁ。ブームとしてのプログレは終わり、パンクにはまだ早い。そんな時期登場したハードでポップでシンフォニックなロック・バンド。下世話なポップ・ソングを1曲でもシングル・カットすれば成功の道はあったかもしれないけど、そうはしなかった奥ゆかしくも職人気質なスタイルが、今となっては愛すべき存在になったともいえなくもないかな。事実、時を経て、少しづつ評価されつつあるようです。とにかく、どの曲もメロディが美しくうねるうねる。デヴィッド・ボウイより全然こっちの方が最高・・・と、思うのはボクだけ?