ブリティッシュ・フォークと森は良く似合います。それは「深い森」というジャンル名で有名な日本だけの認識ではなくて、イギリスでもフォークといえば、即座に森や庭など、木々が生い茂ったような雰囲気を連想するんじゃないかと思います。たとえば、何の気なしに英国フォークのアルバムを10枚ほど手にとってみましょう。そこに収められたアーティスト写真の7〜8枚ぐらいは森や公園、あるいは庭などの木立ちを背景にしたものだと気がつくでしょう。


フォークといえばアコースティック・ギター。アコギの材質は木。木で作られた楽器だからこそ、森の木々たちが一緒に共鳴してるともいえます。フォークには人を自然に引き寄せる力があるような気がします。もちろんアメリカのフォークにも、そんなような雰囲気はありますが、広大な土地を持つアメリカのフォークは、もっとホーボー的というか、広大で乾いている荒れた道を旅していくような歌も多いもの。でもイギリスのフォークには、もっと木々が生い茂ったような森の中で、狭い同じ場所に踏みとどまっているような雰囲気がします。


バンド名もそんな感じ。以前紹介したTreesもそうですが、このForestなんてバンドもそう。まさにそのまんまズバリ「森」ですからねぇ。英フォークは、社会的メッセージよりもファンタジー志向が強いのかな。ドノヴァンとディランの違いのような。たった2枚のアルバムを残したフォレストの、これは一枚目('69)ですが、とりあえずジャケを観てくださいませ。森の中でフォーク歌ってたら、木と同化しちゃったというわけ。この神秘的で、ちょっと怖い「おとぎ話」のような感覚は、まさに英国フォークならでは。