ビートルズが好きということとビートルズのようになりたいと思うことは、ボクの中ではまったくの問題なわけです。生まれ変わってジョンやポールやジョージになっちゃったら、そりゃいろいろと大変だと思うけど、とはいえ、リンゴだったらいいかなぁ(笑)リンゴのようなポジションでビートルズのような偉大なるバンドに関われるんだったら悪くない。こんなこと書くと、なんだかバカにしているみたいに思われちゃうけど、実はビートルズの中で、一番クールで皮肉が利いてて、一番ビートルズを理解していたのが、なんだかリンゴのような気がするんですよねぇ。


そんなリンゴのソロ・アルバムを聴く時の気分は、まるで会社の気のいい上司とカラオケにつき合わされてるようなものではあります。この何ともいえない心地好いありがた迷惑さ。さんざんお腹いっぱいゴハンをいただいて、最後はお茶漬けでサッパリしめようかと思ったら「どうや、メロンでも食わんか?」と、こちらの答えを待たずに目の前にデザートをてんこ盛りにさせられたような、あの感じ。そういえば、ビリー・プレストンが生前、ビートルズのメンバーの印象をインタビューで聴かれた時、他の3人のことは音楽的なことを語っていたのに、リンゴになったとたん急に顔をニンマリとさせて「リンゴ!いや〜彼はホントにいいヤツだよ!」と言っていましたっけ。


「Goodnight Vienna」('74)のジャケを見た時点で、リンゴから思想的に何か恩恵を預かろうという気になるような人はまずいないでしょう。いや、こじつけで考えれば、これはこれで深い音楽なんですが。しかしジョンやポールの参加が、これほどかすんでしまうようなソロ・アーティストも珍しい(笑)さすがリンゴ・スター。大物です。これこそ聴いた瞬間に誰もが「どうでもいいや」という思うことまちがいなしの、究極の「ぬるま湯ロック」。ビートルズは好きなのに、これは持ってないという人は、お賽銭でもするつもりで買ってみましょう。いいことあるかも。