アンデスの秘境から飛び出してきた豪快なサイケデリック集団が、この南米はペルー出身のトラフィックサウンド(Traffic Sound)。たまたま手に入れた「Virgin」('70)は、どうやらアルバムを3枚出している彼らのセカンドらしいのですが、これが素晴らしい。サイケといっても時代的にフォーキーに片足突っ込んでるせいか、エレキよりアコースティック・ギターの方が目立ってるんですが、全体を包み込むゴチャゴチャとした雰囲気が、まさにサイケ。


タイトル曲はCSNY風味ながら、どこか整理がつかない感じが変だし、「Yellow sea days」あたりの延々と続くトリップ感はジャーマン・サイケにも通じるような感じ。一応リズムはボサノバから始まるんですが、全然落ち着かないムチャクチャな展開に。同じ南米ということもあるんでしょうか、ムタンチスあたりにも通じるハチャメチャさがあります。ただ逆回転してるだけの短いナンバーを挟んだりしてるのも、更なる混沌に拍車をかけています。


演奏能力はお世辞にもあまりよいとはいえず、リズムもぎこちなくてゴツゴツしてるんですが、このバンドに限っては、それすら味になっています。普通なら平凡なR&Bダンス・チューンに終わるはずの曲でさえ、変に民族的な土着サウンドになってますし。う〜ん、これがアンデス・パワーなんでしょうか。やりたいことを何でも詰め込んだような音は、バンド名の「交通音」にもピッタリとハマってます。他のアルバムを是非聴いてみたい。