トラッドというのは民衆の間で伝えられてきた伝承歌であります。日本でいうところの「わらべ唄」や「民謡」みたいなもの。民謡には着物が必需品であるのと同様、トラッドというのも、いかにも古臭い英国の民族衣装を着たほうが、より聴き手に明確なイメージを与えてくれると思われます。この「Morris On」('72)のジャケットなんて、まさにそう。


モリス・オンとはバンド名でもタイトルでもなく、英国に古くから伝わる「モリス・ダンス」を再現したプロジェクト名のようなもの。ジャケットのメンバーのコスプレ写真は、このダンスを踊る時の格好だそうです。女装していたり、なにげにフライングVのエレキをもっているあたり、なかなか笑えますが、何も知らなければ酔っ払いオヤジの忘年会の余興みたいな写真ですな(笑)


しかしアシュリー・ハッチングス、リチャード・トンプソン、デイブ・マタックスらフェアポート組にジョン・カークパトリックのボタン・アコーディオンやバリー・ドランスフィールドのフィドルなどを加えた、まさに、この時代を代表する英国フォークの凄腕メンバーが結集したサウンドは完璧。あまりのコテコテの古臭い音楽に最初は面食らうかもしれませんが、これぞ英国音楽の重要文化財級のアルバムなのです。トラッドといえば、まずはコレを聴かなきゃ始まりません。ちなみに続編もあり。