イミディエイト・レーベルのアルバム群の中でも、もっともレアで入手困難だったのがビリー・ニコルスと、このダンカン・ブラウンの本作「ギヴ・ミー・テイク・ユー」('68)でした。要するに「当時全然売れなかった」というわけなんですね。もちろん、嬉しい事に今ではどちらもCD化済みです。


UKフォークという視点から聴くと、クラシカルなオーケストラを従えたアレンジに幾分の古臭さを感じるかもしれませんが、実はこの「古臭さ」こそが本作の魅力。むしろ「クラシカル・ロック」といった方が相応しいし、雰囲気としては、レフト・バンクやゾンビーズの「オデッセイ&オラクル」あたりに近いです。その繊細さは、まさに触れるとすぐ壊れてしまいそうな小さなガラス細工のよう。


決して上手いシンガーではなく、地味でボソボソした声で一本調子にアコギを弾きながら歌うんですが、どの曲、どの場面をとってみても、静かな朝の木洩れ日のような優しく温かいメロディーばかり。ソフトフォーカスで見せられた初恋の人の写真ように、とらえどころのない懐かしさと痛さが同居した、どこまでも美しく、また切ないサウンドなのです。