オリジナルはレア盤だった「バリー・ドランスフィールド」('72)が紙ジャケでめでたくCD化されました。英国を代表するフィドル奏者でもある彼のシンプルなギターの弾き語りアルバムですが、余計な装飾を一切削ぎ落としたシンプルで純粋な歌心が胸を打つ名盤だと思います。


さらっと聴いていると、ピュアなトラッド集のようにも聴こえるこの作品ですが、選曲はトラッドだけじゃくて、古いミュージックホールの歌や米国のSSW作品、さらにはプロコルハルム(!)のカヴァーと意外にも幅広い。にもかかわらず驚くほど全体のトーンは一貫しています。


マーティン・カーシーやアラン・テイラーの初期作品のように、英国フォークに免疫のないリスナーには、あまりに地味すぎてピンとこないかもしれませんが、使い込むほどに味が出てくるアンティーク家具のような「絶対音楽」の極致がここにあります。まちがいなく英国フォークの1つの到達点。