当時は未発表のままに終わったアルゾのセカンド(73年録音)。日本盤のライナーを読みながら聴いてると、どうしても感傷的な気分になってしまうものの、音楽そのものは実に前向きでピースフルなサウンド。フォーキーといっても土臭くなく、まるで小川の上をスルスルと走るボートのように、滑らかなサウンド。すべてがキラキラしています。


アルゾというミュージシャンは曲を完成させるために様々なメロディーを組み立てて構築していく理論家タイプではなくて、曲が生まれる一瞬のフィーリングだけを頼りに、それをいかに純度を保ったまま音に落としていくかということをどこまでもこだわる感覚派タイプではないかと、そんなことを思いました。


プロデューサーのボブ・ドローがアカデミックな味付けを提案しても「いや、これはこんな感じでいいんだ」と、ひたすらラフなアレンジを生かすことにアルゾがこだわったという話も。そしてそのラフなフィーリングこそ、30年以上たった多くのリスナーを「いや、これはこんな感じがいいんだ」と思わせるに充分な要素だったのです。