手前にいるアップの東洋人女性の顔はピンボケ、ブスっとしているウェイン・ショーターの顔は木の枝で邪魔されてる。2人とも、頭の上の部分が切れてしまってるし。タイトル上のキスマークも、あまり意味があるとは思えない。このジャケの曖昧さは、それゆえに理屈を越えたカッコよさを感じてしまいます。


このジャケから感じられるクールかつ、一種異様なムードが、どことなくショーター自身のサウンドと見事に連動しているようです。メロディーもコードも、どこか抽象的な無機質さがあります。決して明るくもないけど、暗くというわけでもないというコード進行の妙。そう、まるでこのジャケの深く沈んだブルーのイメージに限りなく近い。


何から何までショーターらしい完璧な全6曲。オープニングの「Witch Hunt」なんて冒頭30秒ぐらいで鳥肌が立つくらい。「Infant Eyes」も実に情感豊かなバラード。東洋つながりで、スティーリー・ダンの「彩(エイジャ)」のサックスソロがショーターだったことを思い出します。きっとダンのふたりも、このアルバムが好きなはず。