初めてこの6曲入りミニアルバムを聴いたとき、正直泣きました。いや、涙は出なかったんですけどね。世間一般のバラードとかそういうたぐいの曲じゃないのに、不器用でまっすぐで、なんの飾り気のない楽曲そのものに、自分の人生の過去・現在・未来が一瞬で要約されてしまったかのよう。


たとえば「とおりは夜だらけ」という曲。止まりそうで止まらないドラムのパターンの合間に、零れ落ちるように美しいメロディとシンプルなコード進行。あまりにそっけない淡白な女性ボーカルの声質と歌い方。一瞬、幻想的になるエコー処理やメロトロンの使い方まで、何もかも完璧な名曲。


いや、この曲だけが突出しているわけじゃないのです。あの若手に辛口そうな山下達郎に「どの曲も素晴らしい」と言わしめたほどの空気公団ですから。シュガーベイブ時代の大貫妙子が持っていた、あの素人臭い「危うさ」と「揺らぎ」の美学を徹底して純化して、なおかつ進化させると、こういうサウンドになるのかも。