「どうして、こうも落ち着きがないんだろう?」。これが、このトッド・ラングレンのアルバムを高校生の時に初めて聴いた時の素直な感想。ポップで泣かせるバラードがあったかと思うと、次の瞬間「ウソだよ〜ん」と言わんばかりにハードな曲が炸裂してしまう。目くるめく展開に、聴き手は、どこまでも落ち着かない。


1人多重録音による演奏やコーラスは、音を音で埋め尽くそうと必死にしているみたい。積み重ねられた音は、まるで中域をバッサリとカットされたかのように、シャリシャリと高音ばかりが耳についてしまうし、どの曲もメロディアスなのに、どこか人間臭さを排除したかのように、ヒンヤリと冷たい感覚だけが残ります。


と、何故か否定的なことばかり書いているようですが、これらすべての「バランスの悪さ」を、究極の「破綻の美学」として、第一級のポップにまとめあげてしまうのが、この人の天才たる所以。歌いまわしや歌詞からは、どこか孤独でロマンチックな一面も覗かせてくれます。今では、一生モノの名盤に。