あっという間に現れて忽然と消えてしまったシンガー・ソングライター。この2ndアルバムに収録された「遠くへ行こう」というボクの大好きな曲には、こんなフレーズがあります。「弱い人にだけ 帰る場所はあるから」。その帰る場所が上田まりの歌という人は、きっと日本のどこかに何人かいるはずでしょう。


詞も曲も歌声も、何もかもが自然体。AOR〜シティ・ポップの良心を受け継いだ極めてナチュラルなアレンジ。何か色んな曲に挑戦して世間をアッと言わせてやろうとか、そういう芸能的ないやらしさが、この人にはまったくない。地味といえば地味。avex traxなのに、一番それらしくない音楽というか。


どの曲も、まるで同じような淡い色彩で描かれた水彩画のよう。ところが、ひとたび色の違いを認識してしまうと、どの曲も宝石のように光り輝いてしまう。そんな魅力があります。だから少数ながら彼女のファンだったという人は、どの人も思い入れが強いはず。音楽は「売れた数」より「聴かれた回数」の方が大事だと思います。