このアルバムに収められた「血を吸うカメラ」と同名の古いホラー映画の存在を知ったのは、その昔、宝島に載っていたピチカート・ファイヴ小西康陽のレビューでした。そしてレンタルビデオ屋を何件も探しまわって、やっと映画を観た記憶も懐かしいです。映画の方も素晴らしかった。


思うに、初めて聴いたときに印象に残ったのは、サウンドよりもボーカルの可愛らしさでした。ジャケット写真を見て、もっとアカデミックで大人びたサウンドを期待していたら、そのイメージを崩さないままに、半数近くのボーカル曲から浮かび上がるポップスとしての親しみやすさに、むしろビックリしたのです。


決してマニアックなものじゃなく、学校のクラスに1人ぐらいは、こういう音楽を好きだった人がいたような気がするんです。そして、その人たちは、きっと今でも、こういうポップスの復権を心のどこかで願っているんじゃないでしょうか。たとえばボクも、そんな1人です。