70年代後半のカエターノ・ヴェローゾの作品は、どれも音そのものは軽くトロピカルな感じさえするのに、歌の内容は哲学的だったり難解だったりします。難解といっても、カエターノの歌声そのもので、ちゃんとイメージが伝わるというあたりが、天才の天才たる所以でしょうか。


このアルバムは、アナログA面は、今までになくファンキーな要素がありますが、ビートはそれほど効いてるわけでもなく、楽器編成が多い曲でも、どこかシンプルで静かで、落ち着いた印象があります。当時アメリカで流行っていたようなブラジリアン・フュージョンに安易に流れないあたりもさすが。


タイトルは「虫」という意味ですが、6曲めの「蝶」にならってのジャケット絵でしょうか。切々としたロック・バラード「チグレーザ」は、どこかルー・リード的な名曲。ラストはレシーニャという女性歌手がすべて歌いきり、幻想的な余韻を残して終わります。