こんなの、誰でもできそうな音楽だ、と思わせといて、なかなか他に類を見ないブライアン・イーノアンビエント・ミュージック。例えば、その後に雨後の竹の子のように現れた安易にシンセを使って自然を表現するようなアンビエント音楽とは、決定的に何かが違うような気がします。


イーノは何か特定の情景を表現するために、この音楽を作ったわけではないと思います。ジャケの裏にあるアルバム4曲の譜面というかグラフィックのような記号みたいに、音は音でしかなく、ただ穏やかに羅列してあるだけ。ピアノもシンセもコーラスも、時間の流れやドラマ性を一切否定しているように淡々と存在しているよう。


ユニクロの社長がインタビューで「(ユニクロの)服に個性があるんじゃなく、個性はそれを着る人間そのものにある」と言っていました。実はイーノが目指したのも「音楽そのものに個性があるんじゃなく、それを選んで聴く人間や音楽の流れる空間そのものに、個性を委ねる」ということなのではないでしょうか。