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これ以上甘くても、これ以上苦くてもダメ。そんな、いつも絶妙な味わいで体を癒してくれる暖かいミルクコーヒーのような音楽がケニー・ランキンでした。マイケル・フランクスやスティーヴン・ビショップあたりに近い、AORタイプの優しい歌声ですが、独特の節回しからくるスキルの高さはハンパじゃありません。
ランキンはカバーソングの達人で、自作曲よりも多かったりするんですが、ちゃんと楽曲を自分もモノにして表現しているので、単なるウケ狙いでカバーやってる人たちとは、まるで次元が違います。特に、この茶色のジャケットのアルバムを初めて聴いた時の衝撃は、何十年たった今でも、明確に思い出せるほど。名盤です。
まだ20代前半の頃かな。夜更けまで遊んだ友達が帰った後、買ったばかりのこのLPに初めて針を落としました。半開き窓のカーテンの向こう側で、うっすらと夜が明けて、空が紫色(さすがに銀色じゃなかったです)に徐々に染まっていくのをボンヤリ眺めながら聴いていた記憶が、今でも鮮明に残っています。