邦題「シティ・ウォーキン」は、おそらくジャケのイメージと、1曲目「Walkin' With Somebody」からくるものでしょう。しかし、シティなんて言葉、どこにも出てこない。まぁ、シティ・ポップということで、当時のAOR系の邦題は、勝手に「トロピカル」とか「アーバン」とか「トワイライト」とか、そんな言葉が踊るバブリーな雰囲気だったのです。


マイケル・ラフは知らなくても、これを購入した人は、プロデュースがトミー・リピューマということで、安心感があったはず。時代的に84年はAORの分岐点。デジタルな時代と、どう折り合いをつけるか。そこがポイントだったわけですが、正々堂々と生楽器中心のアンサンブルで勝負し、見事に成功してます。


それでいて1曲目の弾むようなビートなど、ちゃんと80'sっぽい感覚も兼ね備えていて、このあたりのバランスも見事。達者な曲作りもハイトーンのボーカルも、スティーブン・ビショップに匹敵する才能の持ち主。続くセカンドが自主制作1000枚限定だったりするこの人の商売っけのなさに、音楽一筋のAOR魂を垣間見たりして。