歌ものアルバムなのに、どこかにブレイク・ビーツがあったりすると、編集盤に収録される率が高く、結構後々の再評価にもつながるものです。それが70年代に発表された自主制作盤で数が少なく、なおかつメロウで極上な音という評判であれば、さらに「幻の名盤」への期待度も高まるもの。そんな中、個人的にヒットしたのがこれ。


マシュー・ラーキン・カッセルという米国のマイナーなシンガー・ソング・ライターの、オリジナルは300枚しかプレスされなかったという自主制作盤LP。編集盤に収録された「イン・マイ・ライフ」(後半にブレイク・ビーツあり)で注目されたアーティストですが、それ以外の曲も実にユニークさが際立っています。


何しろエレピとベースとドラムというシンプルこの上ないバックの演奏が、かえって古臭くなく新譜のように新鮮なサウンドですし、曲も単純にフュージョンAORでは済まされない妙なコード進行がヒネクレ・ポップ好きにもたまらないところ。どの曲も2〜3分という簡素さも、なにか不思議な余韻を残し、神秘的な感じすらします。