ロバート・ワイアットの歌声には、何か独特の周波数が混じっているかのような、不思議な響きがあります。その「響き」は、不思議な哀愁と慈悲に満ちて、まるで山奥にいる仙人からの教えを聴くかのように、ボクはスピーカーに向かうのです。


「ロック・ボトム」('73)のような内省的な雰囲気も残しつつ、時代をどんどん通過した「クックーランド」では、とても力強くポジティブな印象も。どんな楽器かも知らないような幾層にも折り重なった音と音。曖昧であるが故に美しく儚いメロディ。


マッチング・モウルで、ソフト・マシーン時代にはできなかったジャズもポップスも現代音楽もミクスチャーしたサウンドは、ここへきて完成の域に。しかも、この後もワイアットは、野心的なアルバムを発表し続けるのですから、恐れ入ります。