ドラム、ベース、ギター、キーボード。それらが全部弾けるマルチミュージシャンなど、星の数ほど。しかしさらにヴァイオリン、チェロオーボエ、サックス、トランペット、シタールまで弾けてしまうとなると、もはやミュージシャンというより曲芸。ヘタをしたら奇人扱い。もちろん曲も書いて歌も歌う。ジャケのイラストまで。何でもかんでも自分でやることが肝心。


ロイ・ウッドのアルバムには、どういうわけかアカデミックな匂いがしません。学理的な部分もキチンと把握していないと、ここまで1人多重録音のアレンジでバランスをとる事は難しいはずなのに。ポップスを目指して実践しつつ、結果的に他の誰にも似てないようなポップスに。これも1人アンサンブルの賜物なのかも。そのサウンドはハッピーサッド。楽しいのに、どこか悲しい。


この人の写真を観てると、いつも瞳が何かを訴えているように「ギョロ」っとこちらを見ています。それは人間の目というより、猫の目のよう。笑っている顔は観た事ないけど、別に怒っているわけでもない。時代に向けたメッセージとか、そういう「ロック」の思想みたいなものも一切なし。というか、そんな事を考えている暇もないほど、「音」そのものに没頭してますね、きっと。