「ムード音楽」という言葉では、別な音楽をイメージされてしまいますが、結局のところタンジェリン・ドリームが目指していたところは、それ。メロディとかリズムが仮にあるとしても、ムードこそがすべての最終目標。初期のプリミティブな即興サウンドからシンセサイザーを使った中期を経て、映画音楽などを多数手がけBGMに徹したときでも、大事なのはムード。ムードがあれば、すべてはOK。


これは100枚以上ともいわれる彼らのディスコグラフィーの、記念すべきファースト。このときのメンバーがエドガー・ フローゼ、クラウス・シュルツェ、コンラッド・シュニッツラー。後のジャーマン・エレクトロの歴史を考えるに、相当とんでもないことになってますね。日本でいえば富田勳と大野松雄小杉武久が一緒にバンドをやっていたようなもの。


当然のようにサウンドは野蛮なピンク・フロイドというか。オルガンとエレキとドラムがドタバタと即興演奏しながら、不気味なチェロやお化け屋敷のような効果音が飛び交う、奇怪で時代を感じさせるもの。でも、最終的には流れるような「ムード」が、どこか心地よい。さすがにメンバーの嗅覚ならぬ耳覚の鋭さのなせる業でしょうか。聴く人によっては、結構怖い音楽であることは間違いないんですが。