23歳
ジメジメしてなくていいですね。片思いの歌であっても空がからっと晴れているような、そんな歌ばかり。愛する男性への「何故?」とか「どうして?」とか、そういう問いかけもなく、身の回りにあるちょっとした風景の変化や穏やかな気持ちのありのままを歌うような。江ノ島、目黒川、新宿。そんな具体的な地名がさらっと歌われるのも、どこか嫌みがなくていいのです。仮に彼女が近所の喫茶店でバイトをしていたとしても、まるで違和感を感じないようなこの佇まい。


前作「さっちゃん」で感じた「1人で凛としてギターを弾いている」というイメージは少なく、仲間たちと一緒にバンド演奏を楽しんでいるような気楽さが今回の特徴でしょうか。当然のようにアコースティックな編成で、基本的に彼女がつま弾いているギターを中心にアレンジが組み立てられています。ラスト曲「パレード」でせっかくバンドが盛り上がったのに、なんだかあっさりとアルバムは終了。この物足りなさは逆に「もっと聴きたい」と思わせてくれるもの。


聴き終えてしまうとアンコールを求めるような気持ちになり、次はライブに足を運んでみようと思う気持ちになりました。そしてやはり感じるのは彼女の「歌声」の魅力。「No Music,No Life」なんて言葉さえも、まるでおばあちゃんのようなたどたどしいカタカナ英語で歌ってしまうのが可愛い。変にサビで盛り上がろうとする歌謡曲的なベタさから解放されている曲作りも新鮮で、このそっけないほどの気負いのないメロディーが、今の季節は春風のように心地よく響いてきます。