以前、ボブ・トリンブルのセカンド「ハーヴェスト・オブ・ドリームス」を取り上げましたが、このファーストも信じがたいほど美しい音楽。これはニューウェイブ時代のサイケ・リバイバルではありません。アメリカの深い闇の向こうで密かにずっと生き残ってしまったリアルなサイケなのです。


甲高い声で歌うポップな曲調に相反する凝りまくったサウンド・コラージュ。録音エンジニアのお遊び的要素もあったとはいえ、ボブ本人の巨大な妄想が無意識にそれを導いていったのではないでしょうか。無垢な魂が漂うサウンドの背後には、得体の知れない狂気も渦巻いているような恐怖感も。


80年代初頭にも関わらず、フレミング・リップスの新譜としても通用するほどの斬新なサウンド。マシンガンを手にしたジャケも相当のインパクト。同じくコレクターに発見されたヴァージン・インサニティー同様、音楽におけるレコードという存在の神秘性をあらためて感じさせてくれる発掘盤。