本来ジミ・ヘンドリックスの4枚目のスタジオアルバムになるはずだったわけですが、キチンとした形で発売されたのが97年。今ではジミを語る上で準オリジナルアルバムに相当する重要な作品となっています(ジャケはイマイチだと思いますが)。これがジャニス・ジョップリンの「パール」のように当時発売されていたら、その後のロック史もだいぶ風景が変わったでしょう。


それまでのジミのスタジオアルバムは、ある種の混沌としたサウンドが、いわゆるサイケデリックな風情を醸し出していて、そこに60年代という時代性を感じずにはいられないのですが、このアルバムは完全に「70年代」らしいスッキリした音。ギタリストとしての腕は円熟味を増し、曲作りの才能も凄まじい勢いでこの時期に開花していったのかがよくわかります。


ギターの音を重ねるだけでなく、パーカッションやジミ自身によるコーラスなど、緻密にアレンジされた曲も。凄腕ギターを武器にロック界へ殴り込むような怒濤の勢いはそのままに、もっと緻密にアレンジを整理させながら自らの音楽性を再構築したようなクールな視点も感じさせてくれます。それまでとは違うクリアーな音質も新鮮。ジミのアルバムでは1番好きかも。