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レッド・ツェッペリンの「イン・スルー・ジ・アウトドア」からインスパイアされたと思われる茶色のクラフト紙で包まれたジャケット。ザ・フーの「ライブ・アット・リーズ」同様、押印された簡素なスタンプデザインは、明らかに海賊盤LPをパロディにしています。財津和夫の初ソロコンサートの最終日を生々しく収録したライブ・アルバム。演奏は本人が弾くギターかピアノに小編成の簡素なストリングスのみ。アルバムというよりFMラジオのライブ中継のよう。
何が生々しいかというと、ユルいMCまで収録し1曲目から歌詞間違えてたり女性の声でユーモラスに歌ったり唐突に車のCMソング歌ったりと、そのアット・ホームな雰囲気。お客さんの笑い声も含めて何だかランディ・ニューマンの「ライブ」を思い出しました(あれも海賊盤みたいなジャケでした)。当時人気だったチューリップのゴージャスなライブからは見えてこない「人間・財津和夫」に触れた当時小学生だった自分には、これこそが最も好きな彼のソロアルバムとなりました。
「ぼくが愛した犬ドンパ」は当時も今も聴くたびに泣いてしまうし(動物モノに弱い)、「まるで子供のように」「そして また あなたへ」などメロディの美しさを引き立てるストリングスと真摯な歌声に今でも聴き惚れてしまいます。ユルいMCだけでなく青春時代の定義、あるいは大人の定義なども語っています。といっても、氏はこの時、まだ30代前半。今の感覚だと充分に若い。最近の財津さんは何だか自分の亡き父にとてもよく似ていて切なくなりますが、まだまだ元気にずっと音楽活動してもらいたいですね。