当時のYMOムーンライダーズやマライアのメンバーが作曲や演奏やアレンジに一挙に参加したピエール・バルーの1982年のアルバム。アレンジは清水信之清水靖晃鈴木慶一などで、歌詞カードに載せられた演奏メンバークレジットを見ながら聴くと更に楽しいです。もちろんお馴染みのフランシス・レイの曲もあり。プロデュースは立川直樹


初めて聴いた10代の頃は「ニューウェーヴっぽいシャンソン?」ぐらいの気持ちで非常に地味な印象だったのを覚えています。しかしその後に映画や文学を通して少しずつフランスの文化に体が馴染んでいくのと同調するように、たまにレコード棚から引っ張り出して聴き返してみたくなるアルバムでもありました。どちらかというと「東京在住のフランス人が故郷フランスに郷愁を抱いている」という雰囲気のアルバム。


全曲良いのですが、高橋幸宏作曲の「愛を語らずに」が特に好きです。坂本龍一の手がけた優雅なストリングスにバルーの歌声が乗ると、まるで高橋幸宏がアルバム「サラヴァ」でやっていたことを本家の力を借りてもう一度再チャレンジしているかのよう。7分にも及ぶタイトル曲は高橋幸宏とバルーの会話をSEにしたユーモラスかつスリリングなもの。雨に濡れながらタバコを吸うジャケもサウンドにピッタリですね。