昔から「歌が上手いなぁ」と思うアイドルは岩崎良美河合奈保子あたり。子供ながらに当時から歌番組でその実力は認識していました。しかしアイドルという存在で初めて個人的に最も身近に感じたのは岡田有希子菊池桃子でした。自分が10代だった80年代の頃は、とりわけロック音楽に夢中だったので正直「アイドルなんて」という気分だったのですが、この2人は当時から別格の存在でした。ただの可愛いだけでは終わらない、親しみやすさと神秘性が同居した不思議な存在というか。


岡田有希子は歌手としての実力も素晴らしかったのですが、菊池桃子の方は歌番組を観てもあまり声量がなく聴いていて正直危なっかしいものでした。そこを林哲司が作るマイルドな質感のサウンドに上手くマッチさせて、嫌みのないキャンディ・ボイスとして、その歌声を見事に個性に変えていったのが凄いと思います。シングルではアイドルっぽく少年ファンに、アルバムではオールマイティな大人のポップスファン向けに、とイメージを使い分けていたのも見事でした。


この「オーシャン・サイド」は彼女のファースト・アルバム。顔写真のアップがないアイドルのアルバムというのは当時の業界へのひとつの挑戦だったと思います。でも歌詞カードには大きく思いっきり可愛い顔写真が載っていて安心したファンもいたかも。全曲林哲司の作詞・作曲ですが、その後の2枚のアルバムも含め楽曲の統一感という意味では当時の松田聖子のアルバムすら超えてしまうほど見事に高品質なリゾート・ポップス・アルバムに仕上がっています。