最近はレコードやCDを買うのもネットでボタンをポチって感じ。みなさんもそうですよね。ただ、ネットの買い物は、たしかに狙い通りのモノが手に入るという利点はあるにせよ、何か物足りない感じもあるんです。それは音楽的に満たされないということではなくて、何か体そのものが求めているもの。ワクワクするような予感に満ち溢れた何か。

それは、あのレコード屋の「におい」だと思うんです。小奇麗なCDショップじゃないですよ。もっとヴィニール盤がひしめき合っている、あの一種異様なカビ臭いが立ち込めたお店の匂い。ボクが東京に初めて上京してきた1990年という時代は、まだタワーレコードのような大型輸入盤専門店にも、ヴィニール盤が数多く置いてあったような記憶があります。それがまた、ものすごく臭い匂いなんですよね。でも、あの匂いが、「うわ〜、これが東京のレコード屋の匂いかぁ〜」と、非常に鮮烈な印象をもたらしてくれたわけです。この、独特の「昔のタワレコのお店の匂い」が思い出せない人は、今度シールドの輸入盤の見開きレコードの封を切ったときに、ジャケに顔を近づけてください。あの独特のカビ臭い匂いがしますから(笑)

今とは場所が違った渋谷のタワレコもそうでしたが、今はなき六本木のWAVEビルというのも懐かしい。まさに流行の発信地でした。地下には映画館があって、よくレイト・ショーを観にも行きましたっけ。1990年という時代は、まずワールド・ミュージック的なエスニックな雰囲気のアラビアン・ポップスが人気でした。それにハウス・ミュージックやラップの12インチ盤もズラっと並んでました。アシッド・ジャズあたりのUKダンス物も人気。再発盤だと、まだ今のような70年代アメリカ系やブラジル系は、それほど人気ではなく、どちらかというとラテン系、それもマンボとかブーガルーとか、そういうキッチュな音楽、あるいはアシッド・ジャズ絡みでオルガン・ジャズなんかも人気でしたね。ロック系だと、ロンドンのダンス・ミュージック系が盛り上がってて、「セカンド・サマー・オブ・ラブ」とか言われている時代でしたね。ハッピー・マンデーズプライマル・スクリームのアルバムが印象深いです。

今じゃタワレコなんて邦楽CDや国内盤の洋楽CDばっかりで、ちっとも「アメリカン」な感じがしませんが、あの頃はシールド盤のアナログ盤や、紙のロング・ボックス型CD(懐かしい!)の独特の体裁がズラっと並んでいて、なんだか外国のスーパーマーケットにでも居るような気分になったものです。WAVEだって、お店側の方から情報を発信していくような勢いがありました。WAVEはレーベルも持っていたし。

思えば「バブル」だったんでしょうけど、「あの頃のレコ屋の匂い」が恋しいと思うのはボクだけなんでしょうか?今のディスク・ユニオンやHMVだと、どういうわけか、あの独特のカビ臭い匂いがしないんですよ。どうしてなんだろう。

●本日のピック・アップ

ディーライトの「ワールド・クリーク」('90)。さすがに今聴くと古臭い。でも、何かワクワクする。ボクにとって1990年という時代を象徴するアルバム。

●本日の更新「ショック太郎のマテリアル・ワールド」

エル(el)レコード特集 その2です。だんだんマニアックになってきましたが・・・
http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=168425&log=20050208