アルバムのマスタリングが終了しました。マスタリングの作業というのは上手く説明できないのですが、ミックスを終えたすべての楽曲を1つのCDという形にするために音質など調整するアルバム作りの仕上げの最終行程になります。マスタリングスタジオで完成した自分たちの楽曲を聴いてる瞬間は本当に至福のひとときです。しかし「やったぁ完成した!」という嬉しい思いと同時に「あぁこれで終わってしまうのか」というちょっとだけ寂しい思いも感じます。ミュージシャンはアルバムを作るまでが仕事で、もう作り終えたら、そのアルバムはリスナーみんなのものになってしまうのですね。あとはみなさまがそれぞれ好きなように新しいアルバムを楽しんでいただけたら光栄です。


それにしても思う存分、好きな音楽だけを作って、それを発売できることの今の幸せに感謝しなければいけません。何かいろいろな制約にしばられて自分たちの本当にやりたい音楽が発表できないというミュージシャンも多いはずですし。とはいえ単なる自己満足だけで終わるようなアルバムにはしたくなかったのも確か。ポップ音楽の世界では、そこが重要なのです。作ってるときはホットな気分で無我夢中でも、いったん冷静になってクールに見つめ直してみたり、その繰り返しの日々でした。ボクはバンドのメンバーであること以上にサウンドプロデューサーとしての責任が大きいので、そのあたりの客観性を常に保ってアルバム作りの行程をずっと見守っていました。単純にいうと、このアルバムが仮に他のアーティストの作品だったとしても、それを純粋に楽しめることができるのか?ということですね。


出来上がったアルバムのマスターを持って家に帰ると、死んだようにすぐ寝てしまって、夜明け少し前に目が覚めてしまいました。何かちょっと静かな音楽が聴きたくなったのでバッハの「パルティータ集」(1978)を聴いています。ピアノは高橋悠治。頭も心もリセットしてくれる音楽です。家の外では夏の蝉の音も鳴ってますが、それもまたいいアンサンブルになっているようです。